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2009年 09月 01日
1.
衆議院選の結果の報道で興味深かったのは、今回の「政権交代」劇について、海外では「オバマ現象に匹敵」などと報じられているらしいことである。この指摘は当たっているのではないか。要するに、「オバマ現象」も、今回の日本の「政権交代」劇のような茶番の拡大版でしかなかったのであって、今回と同じく、そこにははじめから希望的な芽すら何もない、ということだ。オバマの「核兵器廃絶」演説に感動したりするのは、鳩山由紀夫首相の所信表明演説に感動するのと同じくらい恥ずかしいと思う。両方に感動したという人が本当に出てきそうで恐いが。 今回の衆議院選によって、小林よしのりや田母神(在特会もか)に象徴されるような右派の政治勢力を主要敵とするような、左派ジャーナリズムおよび日本の大多数の左派の、「左」としての存在意義は実質的に消滅した、と言えるだろう。今後、これらは、「政策提言」路線と「是々非々」路線のどちらか(どちらも)になるだろうが、「政権交代の大義」の下で細川政権への批判を半ばタブー化した、かつてのマスコミのような振る舞いを行うだろう。体制への批判力が弱まる、または消滅することは間違いない。 そのことを示唆していると思われるのは、今回の選挙で東京23区から初当選した、民主党の議員のアンケート回答である。 この人は、元「ピースボート共同代表」であり、検索すればすぐ分かるように、平和運動や戦後補償運動界隈にも顔が広い。『世界』編集部の人々とも交流があり(私も知っているが、それほど話したことはない)、『金曜日』にも過去登場している。恐らく、『世界』『金曜日』あたりで今後、登場することになるだろう。 そして、彼女は、朝日新聞のアンケートの「「憲法を改正すべきだ」の意見に賛成ですか、反対ですか。」という問いには、「どちらかと言えば反対」、「「永住外国人の地方参政権を認めるべきだ」の意見に賛成ですか、反対ですか。」という問いには、「どちらかと言えば賛成」と答えている。 http://www2.asahi.com/senkyo2009/carta/O0502021.html 元「ピースボート共同代表」である、過去の彼女の活動を見る限り、前者には「反対」、後者には「賛成」と答えると、普通は思うだろう。この「どちらかと言えば」とは一体何なのだろうか。前者には「反対」、後者には「賛成」と答えている民主党議員は存在しているから(例えば小沢一郎ですら、後者には「賛成」と答えている)、党としての見解に縛られている、というわけではない。 私は、この人物について、過去の活動に照らせば、前者には「反対」と、後者には「賛成」と答えるべきではなかったのか、と言っているのではない(言ってもよいが)。彼女は本心では、前者には「反対」、後者には「賛成」かもしれないし、元「ピースボート共同代表」だからこそ、保守層に支持を拡大するためには、「左翼」的ととられそうな言動を控えた、という「事情」もあるのだろう。だが、問題の本質はそこにこそあるのではないか。 例を挙げれば、ある左派系の雑誌や団体が、保守層も含めた民主党の支持層に「反貧困」や「福祉」の主張を広げたいとすれば、それは別の分野における主張の修正、例えば安全保障問題に関する主張の「現実主義」化か、沈黙とワンセットであろう。また、戦後補償運動も、韓国や中国の対日批判と連帯しない形で民主党政権下での立法を目指すとすれば、日本国家の法的責任を問わない、「反日」的な性格を極力薄めた「人道的」なものにならざるを得ないだろう。民主党政権を支持するという枠組みでは、そうならざるを得ないのであって、この枠組みの下で、左派は自発的に「反日」または反「国益」的な主張を、「どちらかと言えば」というレベルにまで薄めるか消去するかする。こうした立場では、改憲やレイシズムに対抗できないだろう(というか対抗する気がそもそもないのかもしれない)。 「日本は右傾化しているのか、しているとすれば誰が進めているのか」で詳しく書いたように、日本が「東アジア唯一の平和国家」だという表象の下でこそ、周辺諸国から見れば明白な右傾化が進行する(している)のであって、戦後の日本が「平和国家」だとするリベラル・左派は、それを否定する右派勢力と対抗するプロセスにおいて、従来は日本の「普通の国」化に批判的であった自らやその支持層を、周辺アジア諸国の民衆からの対日批判から切り離し、「国益」論の枠組みに回収することになる。民主党政権の下においてこそ、日本国内での右派勢力からの攻撃にもかかわらず、また、労働や福祉等における数々の「左」派的施策にもかかわらず、安全保障基本法の制定や、非核三原則の見直し、軍事力の増強等、右傾化はより円滑に進むだろう。 2. ただ、米朝関係がこのところ進展しているから、民主党の政権基盤が安定している段階で、国交正常化に向けた日朝交渉が進むかもしれない。だが、これは、民主党と自民党の外交の路線対立といったものでは全くなく、政権の安定性、基盤力の問題である。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への敵対感情が強い日本では、政権基盤が不安定では日朝交渉がまともに進められない(例えば福田政権)のであって、仮に今回、自民党が民主党並みに勝利していれば、麻生内閣は日朝国交正常化に向けて邁進していただろうし、民主党はその「拙速さ」を批判していただろう。姜尚中が、大連立を容認しているのも、大連立政権ならば日朝交渉を安定的に進めることができる、という思惑があるのかもしれない。念のために言っておくが、アメリカが北朝鮮に対して強硬姿勢を強めるようになれば、政権基盤の安定性とは無関係に、対北朝鮮制裁措置の拡大、在日朝鮮人への抑圧の強化に帰結するだろう。 姜と言えば、私が注目しているのは、「東アジア共同体」の創設を提唱している鳩山由紀夫首相の下での新内閣に、「東アジア共同体担当大臣」とかで(または「国家戦略局」のメンバーとして)姜が入閣するかである。新内閣でなくとも、第二次鳩山改造内閣あたりで実現するかもしれない。転向後の姜の過剰なまでの熊本へのオマージュは、政治家としての将来的な出馬のためと考えれば合点がいくし、姜は多分、アカデミズムや左派ジャーナリズムには見切りをつけているだろう(だからこそ利用しているのである)。読売や文春が姜を全面的にバックアップするだろうから、右からの反発も大した障害にはなるまいし、姜は、日本の右派も驚くような「国士」「愛国」的発言を行うようになるだろう(そして、左派は、決して姜を批判しないだろう)。 姜が帰化して日本国籍を既に取得しているかどうかは不明だが、姜はそのことに否定的ではない。山本モナとのやりとりを見てみよう。 「モナ 今、オバマがこれほど支持されるのはどうしてなんでしょう。 姜 アメリカは傷ついたぶん、「変わりたい」という気持ちがあるんでしょうね。日本にはそれはない。オバマが大統領になるなんて、僕が内閣総理大臣になるようなもんでしょう。これは大変なことですよ。僕だって殺されるよ(笑)。 モナ 私、在日コリアンの方にも地方参政権を付与すべきだと考えてます。 姜 でも僕は、最近はあんまり国籍にはこだわっていません。 モナ だめです! 姜 いや、国籍だけが唯一のアイデンティティーである時代は終わったと思います。 モナ 一部の政治家が言うところの、参政権がなくても帰化をする要件を緩めたからいいではないか、という論理はおかしいと思うんですよね。 姜 本当はね。ただ国籍を与えますよ、じゃ名前も変えてまったく痕跡がなくなってしまうから、地方参政権を与えることで、それが一つの中間点になって、そこから国籍について考えていけばいい。今後、日本はマルチエスニックな社会にならなければ、少子高齢化を生き抜いていけないと思います。これからは青い目の人が日本国籍を持って東京都知事になるとか、そんなことがもうざらにあるほうがいいと思う。なってみたらどうですか?(笑い)」(「山本モナのあなたを知りたい 第26回」『AERA』2008年6月30日号。強調は引用者、以下同じ) このやりとりでもう一つ注目すべきなのは、姜が、仮定の話とはいえ、外国人が政治家になるということに二度言及していることである。姜は、『AERA』の自身の連載記事のような別の場所でも、オバマは自分が日本国籍を取得して大統領選に出たようなもの、と発言している。 次の中島岳志とのやりとりも見てみよう。何かしら匂うのである。 「中島 (中略)ただ、今の民主党が健全な保守リベラルを生み出す可能性は、まだなくはないと思います。まず、そこからでしょうか。 姜 その可能性は、僕は十分にあると思う。ところで中島さんは、現実政治に血湧き肉躍ることってない? 中島 全然湧き躍らないですよー。僕はやっぱり、どちらかというと文学の人間だと思います。政治的かけひきを繰り返して、落としどころを見つける作業って、全く向いてない。それに政治って、国政の場だけじゃないですし。町内にもちゃんとある。近所のみんなが集まって、ゴミの捨て方とかが話しあわれて、合意形成されて、「あいつ、なんか悪い奴だって言われてたけれど、まあ、話せるじゃないか」と。そういう場面が、俺は好きですけど。 姜 そう思っている人が、けっこう意外と永田町へ(笑)。 中島 いやあ、全くないというか。どちらかというとのんびりしたいほうですね。政治家は本当にタフな仕事だなと、見ていて思います。しかし、保守がしっかりしていないと、政治は危ない。保守思想がみんな分からなくなってしまっているので、なぜか僕みたいな人間が、「保守とは何か」といった議論を展開してしまっている。真の保守は立派なものだと思うんですよね。 姜 ラディカル保守(笑)。 中島 いやいや。これだけ新自由主義がダメという共通合意ができつつあると、やっぱり、新自由主義路線は、あと五年も保だない気がします。そうしたときに、もう一回大きな政府にバーンと戻るんじゃなくて、やはり着実に二つの道を、保守と社民主義をちゃんと立てないといけない。 姜 というわけで、中島さんが政権ブレーンに(笑)。 中島 ならないです、ならないです。」(姜尚中・中島岳志『日本――根拠地からの問い』毎日新聞社、2008年2月。対談の日付は2007年8月30~31日) 姜はなぜこんなに楽しそうなのだろうか。唐突な話題の切り出し方(この「ところで」は奇妙だ)もさることながら、「現実政治」が、ここでは「永田町」と同一視されていることに注目しておこう。 私にはなんとなく、姜は政治家としての道にかなり前向きのように見える。時期(米朝関係の進展具合等)をうかがっているのかもしれない。 姜が入閣すれば、リベラルや左派からの民主党政権への批判は、実質的にほぼ完全にタブー化するだろう。仮に姜が「日本のオバマ」などとして持ち上げられるような事態になったとすれば、それこそ巨大な茶番劇だ。いずれにせよ、私が一貫して言っているように、かつてのリベラルや左派は「国益」中心主義に変質してしまっているのであって、そうした人々への批判を抜きにして右派勢力だけ叩いてもあまり意味がなく、むしろ現在の情勢では民主党的な枠組みに回収されるだけである。そのことは、今後、よりあからさまになっていくだろう。
by kollwitz2000
| 2009-09-01 00:00
| 日本社会
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