
圧倒的に面白かったのだが、紹介したいところが多すぎるので、とりあえず読んでください、と言うほかない。著者のブリクモンとその政治的立場については、後述のブログ「博愛手帖」の記事を参照されたい。
訳者の功績は多としたいが、訳者あとがきの内容が酷い。訳者はここで、今年のリビアの事態を、民衆革命とのみ捉えて、ブリクモンが取り上げているユーゴやイラクその他の事例とは区別している。だが、2011年後半時点で、リビアの事態以上に「人道的帝国主義」の問題が焦点になっている件はないだろう。これは、人道的介入への賛同者も反対者も問わず、そうであろう。しかも、ブリクモンは、ブログ「博愛手帖」が紹介してくれているように、リビアへの侵略戦争と左派の追随・黙認を徹底的に批判している。
http://hakuainotebook.blog38.fc2.com/blog-entry-45.html
http://hakuainotebook.blog38.fc2.com/blog-entry-55.html
ブリクモンのリビアの事態に関する発言は、本来ならば訳者あとがきあたりで紹介されても良さそうなものだが、全く言及がない。私は、本文を読み終えた後にこのあとがきを読んで、呆然とせざるを得なかった。参考として薦められている本も、本多勝一や広井良典、最上敏樹といった人々であって、ピントがずれているように思った。そもそも、現在の日本で「人道的帝国主義」の問題を考えるに当たっては、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)およびそれをめぐる言説の問題が避けられないと思うのだが、それへの言及も全然なく、日本はアメリカへの従属という観点からのみ問題とされている。訳者がブリクモンの問題意識や問題設定を理解しているかは大いに疑問である。
また、意味の通らない訳文もいくつか散見された。ただし、ブリクモンの中心的な主張が分からないほどではない(と思う)。
というわけで、価格があまり安くないことからも(税込3360円)、新刊で買って出版社を買い支えるべきとまでは言いにくい本だが、広く読まれるべき本であることは疑いない。是非一読を勧めたい。