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2012年 02月 03日
岩波書店の2013年度の採用方針が話題になっている。ヤフーニュースのトップにもなり、共同通信の記事が多くの地方紙やスポーツ新聞、毎日新聞に掲載され、また、読売や産経も報道している。現時点では大手紙で報じていないのは朝日と日経のみだ(強調は引用者)。
応募条件「コネのある人」宣言 岩波書店が縁故採用 応募資格は“コネ”のある人―。老舗出版社の岩波書店(東京)が、2013年度定期採用で、応募条件として「岩波書店(から出版した)著者の紹介状あるいは社員の紹介があること」を掲げ、事実上、縁故採用に限る方針を示したことが2日分かった。 同社の就職人気は高く、例年、数人の採用に対し千人以上が応募。担当者は縁故採用に限った理由を「出版不況もあり、採用にかける時間や費用を削減するため」と説明。入社希望者は「自ら縁故を見つけてほしい」としている。 岩波書店の13年度採用は、大学の新卒や経験者らを対象に実施。書類審査後、4月に筆記試験や面接を行い、若干名を採用する 2012/02/02 18:19 【共同通信】 http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012020201001572.html 岩波書店、採用で「著者か社員の紹介必要」 岩波書店が2013年度の定期採用をめぐり、応募資格の条件として、「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」とホームページで告知していることが分かった。 事実上の縁故採用とも取られかねない告知方法で、厚生労働省就労支援室は「あまり聞いたことはない。採用の自由はあるが、厚労省としては基本的に広く門戸を開き、応募者の適性、能力に応じた採用選考をお願いしている」と話している。 同社では13年度、若干名の採用を予定している。 (2012年2月2日21時17分 読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120202-OYT1T00976.htm 応募条件は「コネのある人」 岩波書店が来年度採用で 出版社の岩波書店(東京)が平成25年度定期採用の応募条件として「岩波書店から出版した著者の紹介状あるいは社員の紹介があること」とし事実上、縁故採用に限る方針を示したことが2日分かった。 岩波書店は大正2年創業の老舗。就職先として人気が高く、例年数人の採用に対し1千人以上が応募している。 「縁故」に限ったのは、出版不況が続く中、有能な人材を効果的に採用するのが狙いとみられるが、機会平等の観点から議論も呼びそうだ。 2012.2.2 22:37 [就職・転職](産経新聞) http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120202/biz12020222390044-n1.htm もともとこれらの記事の元ネタである岩波書店の採用方針に関する話題は、ここ数日、ツイッター上で話題になっていたものであり、下の 「コネがないと岩波書店に入れない?:岩波書店の新採用方針について。」をトゥギャりました。 http://togetter.com/li/250004 でまとめられているやりとりが発端である。ここでは、「数週間したらYahoo!!ニュースのトップに来そうな話題ではある。」と書かれているが、わずか2日でトップに来てしまった。 インターネット上ではこの件について呆れるほど多くの人間がツイッターなどで言及している。当然批判も多いが、驚くことに、擁護論も多い。いくつか気になった点を書いておこう。 まず、今回の岩波の採用基準が、昔から岩波書店で行なわれてきたものを公然化させたのに過ぎないのだから、それほど騒ぐようなことではない、という擁護論である。典型的なのは、@norikan2こと神田典行という「ノンフィクションライター」の発言である。 「昔からでは RT @kamematsu: 岩波書店の新卒採用は「コネ限定」に。「2013年度の社員採用は一般公募ではなく、岩波書店著者もしくは岩波書店社員の紹介を応募条件として行います」。http://iwanami.co.jp/company/index_…」 https://twitter.com/#!/norikan2/status/164372002327629824 「@kamematsu 僕の時代はそうでしたし、年代違っても受験した人、岩波の人に聞いてもそうでした。ずっとそうなのかはわかりませんが」 https://twitter.com/#!/norikan2/status/164372465462673408 「昔は岩波の常連筆者2名の推薦とかだったような気もします RT @kamematsu: なるほど。面白い会社ですね。合理的といえば、合理的だ。RT @norikan2: 僕の時代はそうでしたし、年代違っても受験した人、岩波の人に聞いてもそうでした。ずっとそうなのかはわかりませんが」 https://twitter.com/#!/norikan2/status/164373254616780802 「えっ岩波の採用、毎日が今記事にしているの?昨日もツイートしたけれど、あれ昔からだと思うけど」 https://twitter.com/#!/norikan2/status/165015122220290048 このように神田は、「昔から」このような採用形態であったから、取り立てて報道価値はなく、新聞が記事化するようなものではないとの認識を示している。 だが、「昔から」そうであるからといって問題性がなくなるわけではない。例えば、岩波書店は、私が労基署に申告するまで数十年間にわたって残業代が一切払われない会社であったが、だからといってそれが正当化されるわけではない。当り前の話である。神田はまず、理屈にすらならない理由で岩波書店の今回の措置の奇妙さを正当化しようとしている。 また、神田の発言は明確に事実に反する。神田が言うように、仮に神田の「時代」はそうだったとしよう。だが、だからといってそれは、「昔から」現在に至るまで、一貫してそうだったということにはならない。私は、2003年に中途で岩波書店に入社しているが、応募の際には「著者」または「社員」の紹介という条件はなかったし、会社にもそのような文書は提出していない。同時に実施された2004年度新卒採用でもそのような条件はなかった。また、私の知らないところで「著者」または「社員」の紹介書を会社に提出しているケースもあるかもしれないが、入社時のその人物の人脈から、そのような紹介書を書きようがないと思われる社員もいくらでも存在する。ネット上では、神田に限らず「昔からだ」などと書いている人物が多いが、なぜ知りもしないことをあたかも業界人であるかのごとく語ろうとするのかと、読んでいて呆れる。 また、そのように「昔からだ」などとするのは、「縁故」とは無関係に入社している私のような社員をも「縁故」のゆえに入社したと見なすことを意味するのであって、極めて失礼である。神田は、こんな当たり前のことにすら気づいていない。 神田は以下のようにも発言している。 「独立したときにわずかな知り合いの編集者さんにお知らせの葉書を送ったら唯一返事をくれたのが「世界」の編集長だった。「私に出来ることがあればなんでもいってください」という温かい言葉が25歳の若造のどれだけ励みになったか。その方は今岩波の社長をされている」 https://twitter.com/#!/norikan2/status/165021405203791872 神田からすれば、岩波書店の山口昭男代表取締役社長は恩義を感じる対象なのかもしれないが、それならばもう少しまともな擁護論を展開してやるべきではないのか。 ところで、神田の主張が、「縁故」とは無関係に入社している私のような社員をも「縁故」のゆえに入社したと見なすことを意味する点を指摘したが、実は、これと実質的には非常に近いことを、当の岩波書店の採用担当者が上の共同通信の記事の中で発言しているのである。 ここでは、「担当者は縁故採用に限った理由を「出版不況もあり、採用にかける時間や費用を削減するため」と説明。入社希望者は「自ら縁故を見つけてほしい」としている。」とあるが、これは普通には、そもそも採否は「縁故」の有無が問題になるから、どのみち応募しても無駄な応募者のための「採用にかける時間や費用」を削るために、今回の措置に踏み切った、と解されるだろう。事実、ネット上では多くの人間がそのように解している。とすると、当然これまでの採否も同様に「縁故」によるものであるということになり、神田の主張と同じことになる。 しかもこの採用担当者は、今回の措置が「縁故」を意味していることを自分から認めてしまっている。読売新聞の記事は、「事実上の縁故採用とも取られかねない告知方法」と慎重な書き方をしているのだが、この採用担当者は自らこれが「縁故」だとあっけらかんと認めているのである。だから、読売は「岩波書店、採用で「著者か社員の紹介必要」」と慎重な記事タイトルをつけているのに対して、他の記事の見出しには「縁故」「コネ」といった見出しが躍っているのである。 また、「岩波書店著者」の定義も不明確である。これについては、2007年11月の会社の答弁では、「岩波書店から1冊でも本を出版するか、または、『世界』等の岩波書店の雑誌で何回か記事を書いた人」というものであった(「岩波書店による私への攻撃② 「鄭大均さんも「岩波書店の著者」」――実質的な退職勧告」参照) 。そして「岩波書店の著者」が、例えば、新潮社から出した本や「諸君!」「正論」といった雑誌で書いた記事を私が批判するのも、岩波書店から出た本を批判するのと同じだ、などという主張を展開していたのである。 この定義は曖昧であって、では、どの雑誌で何回記事を書けば「岩波書店著者」になるのか、という当然の疑問が生じる。今回の社員募集の過程で、受験希望者から質問があった場合、会社はどのように答えるのだろうか。それとも、「岩波書店著者」とは、以前の答弁とは異なり、岩波書店の企業理念や企業イメージを共有しているような常連執筆者、ということなのだろうか。そうでないと、わざわざ「応募資格」にした意味がよく分からない。その場合、西部邁や福田和也、工藤美代子、義家弘介といった人々は「岩波書店著者」なのだろうか。いろいろな疑問が生じるが、私にはこれは、社内で以心伝心で伝わり、独り歩きしていた「岩波書店著者」なる概念が、何かそのまま出てきてしまったような印象を受ける。 もちろん応募してくる人間は、採用されるために、西部や福田ではなく、定義は不明だがなるべく「岩波書店著者」っぽい人間の紹介状を持ってくるであろう。会ったこともないのに以心伝心で「岩波書店著者」の真髄が理解できる応募者が望まれるのである。また、応募者の心理からすれば、岩波書店社員の紹介にしても、若い社員ではなく、もちろん私ではなく、なるべく有力な社員からの紹介をもらう、ということになるだろう。そうすると、 「縁故で偏った人材採用を繰り返すことで近親相姦状態にならないのだろうか。クローズドコロニー作りたいのか@yutakioka さんの「コネがないと岩波書店に入れない?:岩波書店の新採用方針について。」をお気に入りにしました。 」 https://twitter.com/#!/natsukissweet/status/164108724498206721 と指摘されているような事態に陥りやすいと言えるだろう。しかし、むしろそのように会社内で「岩波原理主義」化が一層進むことこそが、会社の望んでいるものなのかもしれない。 ネット上では、中小企業ならばどこでも縁故で採用している、という意見も多数聞かれる。 だが、今回の岩波書店の措置は、それを大っぴらに、公然とやってしまっているがゆえに、上の読売の記事にあるように厚労省も「あまり聞いたことはない」としているのである。 ツイッターでも指摘されているように、 「「コネがあれば入れる」と「コネがなければ入れない」は全然違う。岩波は後者にシフトした。」 https://twitter.com/#!/yutakioka/status/164063431115292673 ということである。 新卒採用者にまで「著者」または「社員」の紹介を必須とすることは、機会の平等を公然と否定した驚くべき措置であり、今後岩波書店のこの「応募資格」を模倣した企業が現れ、定着していけば、雇用難に苦しむ大多数の学生が大きな精神的被害を被り、また、雇用の機会を失うことは明らかである。現実に、今回の大々的な報道に際しても、岩波書店の措置を肯定的に語る人間も多く、同様の措置が他企業、特に出版業界の企業でとられる可能性もあるだろう。その場合、応募条件に「縁故」が課されることに加えて、採否の基準が今以上に「縁故」に左右されるようになるという二重の意味で、機会の平等に著しく反することになる。 岩波書店の今回の措置は、<佐藤優現象>を推進するその姿勢と全く同質の、企業としての社会的責任という観点を欠落させた行為であると考える。 ネット上ではまた、今回の措置は、岩波書店として何らかの深い考えがあって行なわれたものではないか、という見解も見られる。だが、むしろ私は、岩波書店は、自分たちがやろうとしていることの意味と、それが社会からどのように受け取られるかという点への認識もなく、自然にこのような措置を出してしまったのではないかと思う。私が首都圏労働組合特設ブログで繰り返し書いてきた光景である。 仮に、今回の措置が岩波書店によって撤回された場合(首都圏労働組合は既に撤回要求を出している)、それは、私の推測通り、これが恐らく深い考えもなくなされてしまったものだったことを意味するだろう。もちろん確信犯的に続けられるよりもその方が望ましいのではあるが。
by kollwitz2000
| 2012-02-03 00:00
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