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2017年 10月 21日
立憲民主党は、一時的には野党第一党にはなったとしても、それほど拡大しないうちに自滅し、バックラッシュをもたらして終わるだろう、というのが私の推測である。そう考える理由はいくつかあるが、その大きな理由の一つは、若年世代からの支持がほとんど期待できない点である。若年世代からの支持は、単なる票数だけではなく、集票活動を含めた選挙活動の活性化、(ネット)世論の醸成など、新しい政党が成功する際には不可欠である。 基本的には<佐藤優現象>以降であろうが、民主党政権崩壊あたりかその少し前くらいから、SNSの普及に伴い、(主としてリベラル・左派系の)マスコミ(周辺の研究者や書き手)の集団思考・タコツボ化・同質化が進展しているという印象を私は持っている。大昔の言葉を使えば、「島宇宙化」している。テレビ・新聞等のマスコミが総力を挙げて宣伝した反戦若者運動が全く拡大しなかったことも、その一つの表れだろう。私のように、10年以上新聞をとっておらず、最近は紙媒体では新聞を読む機会すらほとんどない人間からすれば、異次元の世界と感じることも多い。 そうした傾向が行き着いたところで、公然と表面化しつつあるように思われるのが、(特に若年世代の)マスコミ批判は嫉妬・ルサンチマンが原因、という言説である。 例えば、東京新聞記者の榊原崇仁の紹介文によれば、安田浩一は自身が共著者の一人である『安倍政権のネット戦略』(創出版、2013年7月刊)の中で、<「ネトウヨ」は「圧倒的に非正規労働者が多く、高学歴で幸せそうなマスコミを引きずり降ろそうとしている」>という主張を展開しているという。 http://birthofblues.livedoor.biz/archives/51664195.html ここで紹介されている通りのことを安田が実際に書いているのか、私は『安倍政権のネット戦略』を確認していないので何とも言えないが、榊原の紹介の仕方を見る限り、東京新聞記者の榊原自身はこうした言説にそれほど疑問を持っていないようである。 また、井手英策・佐藤優・前原誠司『分断社会ニッポン』(朝日新書、2016年9月刊)の「はじめに」で、井手は以下のように書いている(強調は引用者、以下同じ)。 <努力しても報われないという思いは、若者に「報われない苦労」への怒りを駆り立て、勝者への嫉妬を育み、不登校や引きこもりなどの社会からの逃避を迫っている。>(10~11頁) <ゆがんだルサンチマン(注・節見出し)> <労働の苦痛に耐え、日々の生活をなんとかやり過ごしている人びとは、はたらかずに収入を得る生活保護者を非難し、貧困を自己責任だと突き放すしかない。政府や既成メディアへの反発を強め、急速に保守化、排外主義化の動きを強めているのは、まさに転落の恐怖におびえる中間層である。/反知性主義が喧伝され、止むことのない公務員バッシングの一方で、親はわが子に公務員になることを希望する。強者への嫉妬、まさに「ルサンチマン」である。/だが、さらに厄介なのは、自分よりも弱いものを叩きのめす「押し下げデモクラシー」が浸透しはじめていることだ。弱った者が自分より弱い者を非難する、「ゆがんだルサンチマン」が、日本社会を覆い尽くそうとしている。>(14~15頁) 井手は「分断社会」の克服、という主張を近年積極的に展開している、旧民進党の「ブレーン」だったらしい人物であるが、民進党の両院議員総会で解党が満場一致で了承された点にも表れているように、旧民進党の議員に本質的な違いなどないと見た方がよいから、立憲民主党にも影響を及ぼしそうである。実際に、立憲民主党以降の枝野の発言には「分断」(社会)という語が頻発している。いくつか例を示すと、 <日本の国民生活は一億総中流と言われた時代から格差が拡大し、貧困が増大し、そのことによって社会が分断をされ、世界一安全と言われていた治安にまで、そしてお互いさまという言葉に象徴されていた人と人とのつながりが、どんどん壊れていってしまっています。> https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171002-00000010-wordleaf-pol <少子高齢化が進む、格差が拡大して社会が分断をされていっている。もう限界じゃないのか。まっとうな暮らしを取り戻したい。そんな思いで党を立ち上げました。> https://www.buzzfeed.com/jp/bfjapannews/2017-shuin-kouji-cdp?utm_term=.ykL413mL7#.fbDX8drLW <立憲主義が破壊され、国民が分断されています。> http://politas.jp/features/13/article/582 「既成メディアへの反発」は、世代論的に言えば若年世代が一番強いことは明らかであり、井手が、そのようなメディア批判を「ゆがんだルサンチマン」の枠組みでとらえていることもまた明らかである。井手個人は、自身の純粋な学術的な研究の結果そのような認識に達したのであって、近年の言論の傾向とは無関係だと主張するかもしれないが(もちろんその可能性はないとは言わないが)、井手個人の問題ではなく、こうした認識・言説が、マスコミやリベラル・左派系の界隈で共有されつつあると思われること、公然化しつつあることが重要である。 丸山真男が批判したように、そもそも、批判を行なう際に、相手の主張の内在的な価値や論理的整合性から批判するのではなく、「嫉妬」や「ルサンチマン」のように相手の主張とは別の動機を詮索するというあり方こそが、日本の思想的伝統の特徴の一つであり、ムラ社会の論理そのものである。いま、マスコミで左派ということでいろいろ発言している著名言論人の中には、1990年代か2000年代初頭くらいまでは左翼や市民運動を「ルサンチマン」「怨恨感情」に基づくものとして嘲笑していた者が見られるが、その種の主張が、若年世代や「ネトウヨ」に向けられるようになったということでもある。 自公政権が酷すぎるので、若年世代から立憲民主党が支持を得ることも一時的にはあるかもしれないが(連合からの支持と若年世代の雇用状況・労働環境改善がそもそも両立し得るかは不明であるが)、自分たちの主張や反発が単なる嫉妬やルサンチマンによるものと認識されていることに気づけば、激怒するに至るだろう。マスコミやリベラル・左派系が、仮にそのような主張は表立っては避けるようにしたとしても、これは、(以前、「<佐藤優現象>批判」で「佐藤優がリベラルに人気を得た主な理由」として、マスコミの愚民観を挙げたように)長年の蓄積によるものであるから、必ずボロが出るし、すぐに気づかれるようなものである。また、立憲民主党が拡大し、注目を浴びるようになれば、必ず何か仕出かすであろう(仕出かしそうな面子が揃っている)。そのうち強烈なバックラッシュが来るだろう。 その意味でも、少し前の記事で書いたように、立憲民主党は、右翼運動の発展か右派政権の成立を結果的に後押しすることになる可能性が高いと思う。
by kollwitz2000
| 2017-10-21 00:00
| 日本社会
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