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2018年 02月 12日
本人のツイッターのプロフィールによれば「国際政治と比較政治の研究者」である三浦瑠麗の、2018年2月11日のフジテレビ『ワイドナショー』での発言がネット上で炎上しているという。 下のまとめサイトから引用する。なお、「発言内容書き起こし」は不正確だったので、そこに関しては、私が動画を見ながら修正した。 【三浦瑠麗 さん「大都市には北朝鮮のスリーパーセルが潜んでいて戦争になったら大阪がヤバいと言われている」(ワイドナショー 2018年2月11日)2018/02/11(日) フジテレビ ワイドナショー (発言内容書き起こし) 実際に戦争がはじまったらテロリストが、仮に金正恩さんが殺されてもスリーパーセルといわれて、指導者が死んだとわかったらもう一切外部との連絡を絶って都市で動き始めるスリーパーセルと言うのが活動しはじめると言われているんです。(ここでテロップ「スリーパーセル:一般市民を装って潜伏している工作員やテロリスト」なお、「一般市民を装って」の箇所を強調している)(東野幸治「普段眠っている暗殺分子というのが・・・」)テロリスト分子がいるわけです。それがソウルでも東京でも、もちろん大阪でも。今結構大阪がやばいと言われていて、(松本人志「え?!潜んでるってことですか?」)潜んでます!というのはいざという時の最後のバックアッププランですよ。でそうしたら、首都攻撃するより正直他の大都市が狙われる可能性があるので東京じゃないからといって安心できない。ていうのがあるので正直我々、核だろうが何だろうが戦争して欲しくないんですよ、アメリカに。】 この発言は、上のまとめで差別・排外主義の扇動であると批判を浴びており、それはもちろん必要なことではあるが、単に三浦を批判するだけでは有意義とは言えず、今後も同じことが繰り返されるだけだろう。この種の言説は出版界では前から見られたものである。上のまとめでは、2007年の読売新聞の記事が三浦の発言の前例として挙げられているが、「スリーパー」という言葉は使われていないとしても、似たような主張はこれまでにも行われている。私が5年前に書いた記事から引用する。この文藝春秋の編集部による記述が、すべて伝聞・推測である点も注目すべきであろう。 【日本を代表する大手出版社である文藝春秋が、一般向けの「文春新書」の一冊として2003年11月に刊行した本である『常識「日本の安全保障」』の、「北朝鮮は日本で何をしたのか」という項目には、以下のような記述がある。 「(注・拉致)事件の背景として見逃せないのが、(注・19)59年から始まった「帰国事業」で北に永住帰国した在日朝鮮人約9万3000人の存在である。 潜入してきた工作員だけで狙いどおりの日本人を拉致することはむずかしい。そこで、北朝鮮は永住帰国者の一部を人質にとり、日本に残った彼らの家族や親族を、工作活動に取り込んできたのではないか、との指摘がある。協力しなければ北にいる身内に危害が及ぶことをほのめかし、服従を強要するのだ。こうして協力者・共犯者に仕立てられた在日朝鮮人は「土台人」と呼ばれ、拉致対象の選定から工作員の日本潜入の手引き、工作員へのアジトの提供までさまざまな任務に従わざるをえないという。目には見えないが、日本社会にはすでに北朝鮮工作員の活動を支えるネットワークが張り巡らされているのかもしれない。」(「日本の論点」編集部編『常識「日本の安全保障」』文春新書、2003年11月、47~48頁) つまり、<在日朝鮮人=拉致の(潜在的)協力者・共犯者(「土台人」)>ということである。しかもこの論理を発展させれば、「「帰国事業」で北に永住帰国した在日朝鮮人約9万3000人」の「家族や親族」、その子孫は、何も朝鮮籍に限ったわけではなく、韓国国籍・日本国籍の人間も多いのであるから、朝鮮人の血が混じっていれば<拉致の(潜在的)協力者・共犯者(「土台人」)>と見なされても仕方がない、ということになる。 この図式にとらわれれば、在日朝鮮人は、自分は「土台人」ではないとの<悪魔の証明>を行わなければならないが、「自分には北朝鮮に「帰国」した親族はいない」と事実を述べたとしても、「土台人がやりそうな偽装」だと解釈されうる。レイシストにはいかなる弁明も通用しないのである。上の引用は、人種差別の論理の表出だと思うのだが、これは繰り返して言うように、日本を代表する出版社の一般向けの本の一節であり、私の知る限り何ら問題になっていないし、こんな出版社から本を出す書き手の倫理性も何ら問われていない。】 <悪魔の証明>といえば、前に書いたように、内藤正典も「北朝鮮空軍が、シリアを格好の実戦訓練場にしていないという確証はあるか?」と主張している。「北朝鮮」を持ち出せば、今やなんでもありである。 また、三浦が一般的には「リベラル」や「左派」、「学術的」として認識されている岩波書店から2012年10月に単行本を出版しており、そのことが、三浦の発言に信頼性を持たせている。右翼によるいつもの主張、とは認識されず、リベラル・左派も容認する主張、と認識されることになるからである。今回の三浦の発言も、一般の視聴者にはそのように受け止められているだろう。構図は完全に<佐藤優現象>と同じであり、それが容認されてきたがゆえに、今回の事態も生じていると言える。なお、三浦は2016年12月19日のツイートで、上記の岩波書店から出した単行本について、「六刷が決まりました!」と書いており、岩波書店との関係は決して昔のことではない。 ただ、岩波書店は最近は、下のような主張も掲載するようになっており、「リベラル」「左派」という認識を持たれること自体、会社の本意ではないかもしれない。 また、三浦は、東京大学政策ビジョン研究センター(センター長は藤原帰一)の講師であり、今回の三浦の発言に関しては、当然、この機関も責任を免れないだろう。 三浦の発言は、従来の出版界(とアカデミズムの癒着)の問題点の帰結として生じているのであって(テレビ局については今更論じても仕方ないのでここでは言及しなかった)、三浦の発言により、従来の問題が改めてグロテスクな形で露呈した、と言える。三浦の発言だけではなく、その構造全体が批判されなければならないだろう。
by kollwitz2000
| 2018-02-12 00:00
| 日本社会
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