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2008年 07月 25日
このところの、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)に対する日本による経済制裁一部解除や日朝関係に関する、メディアの論調で目に付くのは、拉致問題について北朝鮮が一定の譲歩を行なってきたから、それをどう評価するかにより、日本政府の対北朝鮮政策が決定される、という論理である。下のような図式だ。
「北朝鮮の譲歩→日本政府による評価→日本政府による対北朝鮮政策の決定」 例えば、下のサイトで、制裁一部解除に関する2008年6月14日の主要紙の社説を読み比べてみるとよい(読売は、検索してください)。 http://d.hatena.ne.jp/ktaro3838/20080614 朝日・毎日は上記の図式の上に立ち、北朝鮮の譲歩を一定評価して、制裁一部解除を支持する。読売は判断保留だが、これは実質的には支持である。日経はこの時点での制裁一部解除に反対しているが、「(注・北朝鮮の)譲歩がせっかく開いた北朝鮮との対話の窓口を閉ざせというわけではない」のであって、北朝鮮側の「本気」「誠意」を疑いつつも、北朝鮮が譲歩しうる対象であると見なしている。だから、この4紙は、上記の図式に立っているわけだ。 だが、実際には上の図式の前に、下の図式が接続しているはずである。 「米朝関係の進展→(米国の介入)→日本政府による対北朝鮮政策のスタンスの変化というシナリオ作成→北朝鮮の譲歩」 現実の流れとしては、恐らく米国が介入して、日本側が譲歩するという話がまずあって、日朝で落としどころをつくろうという話になったわけであろう。ところが、メディア上の論調では、それが逆転しており、北朝鮮の譲歩がまずあって、日本がそれを評価する、ということになっている。 要するに、実際には日本側がスタンスを変えており、その結果として制裁一部解除が出てきているにもかかわらず、メディア上においては、安倍政権下の対北朝鮮政策との連続性は崩れていない、という建前が維持されているのである(注)。 これは奇妙である。外部から見ればそれは明らかだ。例えば、韓国の保守系の新聞『中央日報』は、テロ支援指定国解除について、以下のように書いている。 「日本は米国の北朝鮮テロ指定国解除を平静に受け入れた。これまで、日本人拉致問題の解決を要求し、テロ指定国解除に積極的に反対してきた立場を大きく翻したのだ。」 http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=101788&servcode=A00§code=A00 また、同じく保守系の新聞『朝鮮日報』は、制裁一部解除について、 「日本政府はこれまで、北朝鮮をテロ支援国リストから除外することを検討している米国に強い反対の立場を示しており、今回の合意も米国の仲裁によって成立したとされる」 と報じている(念のためだが、これらの新聞が優れている、と言いたいわけでは全くない。外部から見れば自明だ、ということである)。 http://www.chosunonline.com/article/20080614000019 だが、多分、上記の6月14日の社説を書いた日本の各主要紙の記者たちは、実際には、日本のスタンスの変更という現実をよく理解しているはずである。理解しているにもかかわらず(あるいは、理解しているからこそ)、連続性は崩れていないという建前を維持するのである。みんながわかっているのに、それを紙面に反映するのはタブーになっているのだ。 さて、比喩的に言えば、日本社会は2002年の小泉訪朝以後、北朝鮮との準戦時状態にあったわけである。この準戦時体制の下で、日本社会とその言説構造は、大きく変容した。本来、必要とされるべきは、この準戦時状態の下で起こった、こうした変容の再検証と克服であろう。いわば、「過去清算」である。 連続性は崩れていない、崩す必要もない、という前提であれば、当然、準戦時体制下での変容も、そのまま肯定されることになるわけである。だから、「日朝国交正常化に向けて、幅広い結集を」ということになれば、2002年以降の準戦時体制下での日本社会とその言説構造の変容も、問われることはないわけだ。 したがって、こうした形でいかに日朝関係が急展開し、制裁が全面緩和され、国交正常化にすら達したとしても、日本の準戦時状態が終わることはないだろう。右傾化や、<嫌韓流>の蔓延も変わるまい。第二・第三の北朝鮮バッシングや、中国バッシングなどが起こることになる。 本日深夜の「朝まで生テレビ!」は、日朝関係がテーマである。私は多分見ないが、いち早く「日朝国交正常化」路線に転向した田原総一郎の振る舞いに、驚くく人々も多いのではないか。今回は田原がリードして、多分、日朝関係の更なる展開を求める側が、意外に優勢に立つと思う。 http://www.tv-asahi.co.jp/asanama/video/0807/program.html こうした動きは何ら希望にならない。必要なのは、準戦時状態における変容の再検証と克服であろう。 (注)産経新聞と東京新聞の6月14日の社説は、もともと北朝鮮が交渉相手として信頼するに値しないと強調した上での反対であるが、その意味では両紙の方が、まだリベラル紙よりも「スタンスの変更」を言語化していると言える。ただし、東京新聞は「拉致解決を支援参加の前提にしている日本にとって情勢は有利に動いている。日米韓、日中韓の連携も強化されつつある。いまは焦るときではない」と脳天気に書いているから、単に何も分かっていないだけかもしれない。産経新聞の苛立ちと好対照である。
by kollwitz2000
| 2008-07-25 00:00
| 日本社会
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