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2009年 06月 13日
我ながら大きく出たタイトルであるが、結局、<佐藤優現象>をはじめとして、私がこのブログで問題にしてきたテーマとそれへの(無)反応は、この問いに帰着するのではないかと思う。
もう少し問いを絞れば、安部政権崩壊(または2007年参議院選)後、日本は右傾化しているのか、しているとすればその支持層はどういったものなのか、ということだ。 多分、日本のリベラル・左派のかなりの部分は、本音では、「右傾化していない」と認識していると思う。格差社会を是正しようという声は保守の間でも強まっており、一時期に比べ、改憲の声も弱まっている。首相の靖国神社公式参拝も控えられている。田母神問題で見られたように、「大東亜戦争」を肯定する人物が政治的な重職に就くべきではないという見解は、保守層も含めた日本のコンセンサスになっている・・・といった具合だ。 だが、こうした認識は、以下のような問いに当然逢着する。それでは、昨年見られた、ほとんど歯止めを失ったかのような中国バッシングは一体なんだったのか?朝鮮民主主義人民共和国のロケット発射、核実験への一連の麻生内閣の対応に対して、ほとんど反対の声が挙がらないのはなぜか?海賊対策という名の対テロ戦争への日本の参加に対して、ほとんど反対の声が挙がらないのはなぜか?朝鮮総連への弾圧が容認されているのはなぜか?外国人労働者流入反対論が流行していたり、入管法の改悪がほとんど話題にならなかったりするのはなぜか?・・・等々。 「右傾化していない」というリベラル・左派の人々は、これらの問いに対してどう答えるか。単純化して言うと、これらの、私からは右傾化と見える事象に対して、「別に問題ないよ。自分も賛成だよ」と答える(①)のが民主党や朝日新聞であり、「確かに行きすぎだと思うが、一定の妥当性はあると思う」と答える(②)のが護憲派メディアの大半である。両者は、「普通の国」論(「国益」論)にすでに取り込まれているからこそ、そう考えるのである。 日本は右傾化している。だが、問題は、むしろその次にある。その右傾化は誰が進めているのか、支持しているのか。特に、安部政権崩壊(または2007年参議院選)後はどうなのか、といった問いだ。 多分、中国や韓国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の、官民含めたレベルでの主要な論調は、「日本は右傾化している」といったものだろう。私もその認識には完全に同意する。そして、この「誰がその右傾化を進めているのか」という問いに対する答えとして存在するのは、恐らく、「日本では戦前の軍国主義の残存勢力が、いまだに強いため、かつての戦争被害を民衆が忘れていき、右傾化していっている」というものである。 念のために言っておくと、こうした理解は大筋では正しい。だが、この見解は、「右傾化していない」という認識と同様、多くの疑問に逢着することになる。それでは、民主党はなぜ勝っているのか?首相が靖国参拝しないのはなぜか?改憲の声が、かつてほどには高まっていないのはなぜか?・・・等々。 特に、韓国左派からすれば、今の日本の状況は複雑怪奇に見えるだろう。日本は間違いなく右傾化している。ところが、日本は次の衆議院選で民主党が政権を握りそうだ。ところが、その民主党の対外政策は自民党と大して変わらず、90年代初頭には日本の右傾化の象徴的な政治家であった小沢一郎の影響力が強い。ところが、かつて韓国民主化闘争を支援した『世界』のような日本の「進歩派勢力」は、こぞって民主党を支持している。ところが、日本の「良心派」の代表的知識人たる和田春樹は、右翼の佐藤優と連携している。さっぱりわけがわからないではないか。 こうした複雑怪奇さから、韓国左派の一部からは、「日本は実は、それほど右傾化していないのではないか。むしろ、私たちの方が「ナショナリズム」の過剰だったのではないか」といった「反省」(例えば「韓日、連帯21」。中心人物の一人の朴裕河はむしろ確信犯だが)が出てきているように思う。韓国左派の間の、日本の学術や「進歩派」への過大評価も、そうした「反省」を後押ししているだろう。 それはさておき、「右傾化している」という認識に立っていると思われる人々の諸発言を見ると、右傾化の説明は、以下の二つに集約できると思われる。 一つ目は、日本の「進歩派勢力」が、右派勢力に取り込まれた、という説明である(③)。多分、中国・韓国・北朝鮮では、民衆レベルでは、こうした認識をするはずである。この認識はそれほど間違っていないと思うのだが、「誰が右傾化を支持しているか」という問いに対しては、十分な答えにはなっていないように思われる。 二つ目は、日本においては、本音では「大東亜戦争」肯定史観を持ち、戦前の軍国主義勢力とも関わりの深いような右派勢力が非常に強大であり、安部政権崩壊後も、福田政権下でも、麻生政権下でも、こうした勢力が基本的に政治・社会を牛耳っている、とする説明である(④)。この認識は、必ずしも「国益」論に組しない護憲派の人々にも多いように見える。この立場は、上で挙げた②とは矛盾しているのだが、その辺は無頓着に、②のような見解を持ちつつも同時に、こうした認識を持っている護憲派も多いように思う。 この立場からすれば、田母神発言は氷山の一角であり、自衛隊は文民統制の枠組みからの脱却を図っており、クーデターの機会すら狙っていることになる。また、国家権力は、民衆の一挙手一投足をも監視下に置く「監視国家」の実現を目論んでいることになる。そして、「大東亜戦争」を全面的に擁護し、かつ社会的影響力を広範に持つ小林よしのりのような人物は、何を措いても打倒しなければならない人物となる。 ついでに指摘しておくと、<佐藤優現象>は、その支持者を①②④の立場の人々から得ている。一般読者レベルでは①の立場の人々が中心だが、マスコミレベルにおいては、②と④といった矛盾する認識を同時に持っている人間(編集者やジャーナリスト)が中心的な支持者である。 (つづく)
by kollwitz2000
| 2009-06-13 00:01
| 日本社会
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